農薬と肥料
農薬と肥料について関心のある方は是非お読みください。
農薬 | ||||
そもそも安全とは一体なんでしょうか、なにを基準に安全だと思うにでしょうか。 例えば毎日使っている食器用洗剤、除菌を売り物にしていますが菌を取り除く 物質が本当に安全なのでしょうか。それは厚生省が認可しているから大丈夫だと 言われる方が多いのではないかと思います。 農薬も農水省と厚生省によって許可されたものだけが販売されています。 しかし農薬って毒物だろうと言われればその通りです。そのまま飲めば死んでし まう物もたくさんあります。その上化学合成物質だろう「危険だと」と言われれば それもそうかも知れません。しかし天然食品の中にも毒性の強い物がたくさん あります。一部を紹介します。 |
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急性経口毒性(口から入った場合の毒性)LD50(mg/kg) | ||||
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(LD50とは中央致死量と言ってある物質を与えて50%が死ぬ量) (mg/kgとは体重1kgに対して何mg与えると中央致死量になるという数値) |
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つまり、ネズミを人間と置き換えて人間の体重を50kgとすると 食塩は150gで、カフェインは10.5g(ダイアジノンとほぼ同等) カプサイシンに至っては一人当たり3.5gで100人の内50人が死んでしまうと言うことです。 そもそも液状タイプの農薬は約1000倍に薄めて散布しますし、粒状タイプは 含まれている成分が少量です。 農薬はその大多数が紫外線やバクテリア等に分解されて二酸化炭素や水になってしまいます。 農薬メーカーはある作物への使用登録をとるために莫大な試験データを取ります。 残留農薬のことがたまに新聞に載ったりしますが、残留についても安全基準があって、 最大無作用量(例えばある農薬について人が一生かかって食べても影響が出ないであろう 数値に100倍したもの)が決まっていて、それをもとに作物に対する登録と使用回数、使用量が 定められます。これは慢性毒性についてです。 このように急性毒性、慢性毒性等の試験を積み上げなければ農薬として世に出ることはありません。 現在の化学水準では安全と言うことです。これを疑ってしまうと、現在安全で体に良いとされるもの 例えば、お茶・・・カフェインが入っているのはご承知の通りですが、度を超せば害になるのは 前述の通りです。その他、現在では分析できない物質がひょっとして10年後に危険だとわかるかも知れないのです。 そもそも、全世界のありとあらゆる動物と植物は、人間に食べられるために棲息しているわけではないのです。 彼等は種の保存のために外敵にとって毒になるものをもっているのです。 代表的なものにフグの毒、テトロドトキシンや青梅の青酸などがあります。自然界の植物は病気になったり 虫にかじられても農薬散布をしてもらえませんから、自分たちでそれに対する抵抗性を持っています。 そうでなければ絶滅してしまうからです。植物は外敵から攻撃を受けるとそういう物質をよけいに製造します。 人間にとって毒になるか、薬になるかわからない物質をです。 現在、我々が口にしている農作物は彼等原種から、甘くしたり、大きくしたり、苦みをとったり、と品種改良 という人間にとって都合のいい進化(あるいは退化)をさせた、いわば自然界にとって歪んだ奇形品種と 言うことになります。 防護能力がなくおいしい(虫にとっても)作物は、人間の庇護なくしては生育ステージを全うすることは 出来ないのです。 また農業とは農家にとってビジネスです。生産物を沢山収穫して収入を得なければ生活できません。 自家菜園で野菜を作った人ならお解りかと思いますが、買った野菜の方がずっと安くすみます。 もし農薬がなかったらトマトは1個いくらになるでしょうか?キャベツは、ニンジンは・・・ 空恐ろしくなります。 昔の農作物は安全だったという人がいます。本当にそうでしょうか。終戦後、進駐軍によって当時の 子供たちはDDTを頭からかけられています。DDTもBHCもとうの昔に製造禁止です。 水銀剤、ヒ素剤も同じです。 飢餓に苦しむアフリカでバッタの大群がきて、目の前でトウモロコシを食べ尽くすシーンをテレビで 何回か見たことがあります。 殺虫剤をかければ守ることが出来るのに、やっとの思いで灌水設備を作って種が蒔けてもう少しで 収穫と言うときにです。 我が国は高温多湿の上、せまい土地に同じ作物を繰り返し作ります。そのため連作障害が起こったり、 同じ病害虫に狙われてしまいます。農薬の助けが必要なのです。 農薬は無料ではありません。散布する農家も注意が必要です。無駄にジャブジャブ散布しているわけでは ありません。抜き打ちで残留検査もされています。 農薬の使用を守って作られた農作物は安全です。安心してお召し上がりください。 |
水稲の生育ステージと病害虫達 | |
水稲は一年生の草です。従って収穫されるときが一生を終えるときです。 一生の間には様々な雑草・病害虫が待ち受けています。その一部をステージごとにご紹介します。 これらを全て無農薬でクリアー出来るでしょうか。 |
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は 種 |
ばか苗病 種子を消毒しないと出る病気。これにかかると穂のでない稲になってしまう。 クモノスカビ、苗立ち枯れ病、むれ苗 絶対薬がいるわけではないが立ち枯れ病は土壌病菌 のため予防が必要。 ハモグリバエ 田植え直後に付く害虫、発生すると苗を枯らしてしまう。 イネミズゾウムシ 材木について我が国に入ってきた害虫、幼虫は根を食害するため入られと 全滅してしまう イネドロオイムシ 幼虫が葉を食害するため田全体が真っ白になってしまう。 いもち、もんがれ病 低温や日照不足で起こりやすいのがいもち病。平成5年東北地方で全滅させ たのはこの病気。 カメムシ 出穂直後に飛来、穂に直接針を刺して食害するため、米に斑点として残ってしまう。 斑点米は炊いても臭う。 |
育 苗 |
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田 植 |
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本 田 |
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出 穂 |
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刈 取 |
肥料 |
肥料は大きく分けて、無機と有機があります。その差は、単にC(炭素)が入っているものを有機と呼んでいる だけなのです。 ですから、硫安という肥料は無機で尿素(化粧品など使用)有機になります。どちらも化学品です。 天然で存在する有機は動物と植物に分かれます。それから、それらを使った残さ(産業廃棄物)があります。 効能としては乱暴に分けると植物は香りに、動物は味に影響が出ると言われています。 例えば、お茶には菜種粕、メロンには骨粉というように・・・。しかし事はそう単純ではありません。両者が複雑に 絡み合って深い味わいを出しているのです。 代表的な有機肥料をいくつか上げておきましょう。 植物 菜種粕 ナタネ油を搾った粕、もっとも一般的 現在そのほとんどは圧力をかけて搾った後、薬品で残りの油を 溶かしだして、油分はほとんど0. 大豆粕 菜種粕と同様 動物 魚粕 イワシなどから脂を搾った残り、骨などもそのままなので窒素、リン酸分あり 蒸製骨粉 動物の骨を高温で蒸すことにより土中で分解しやすくなっている。リン酸を多量に含んでいる。 乾血粉 動物の血液を乾かしたもの、かつて体内で栄養分を運んでいたので肥料としても抜群。 カニ殻 我々が食べたカニのカラ、防センチュウ効果やキトサン(一説ではキチン質がキトサン質に変わる のに 5年くらいかかる)を含む。 産業廃棄物 豚、牛、ニワトリ等のフン 食品工場から出る残さ 汚泥 終末処理場から出る物、肥料分を多量に含んでいる。 菌体 ビール工場から出るビールを搾った残り、酵母菌が入っているためこう呼ぶ。 原料的にも有機肥料というのは沢山ありますが、それぞれが人間の都合のいいように肥料成分を持っているわけ ではありません。特にカリ成分では自然界に有機カリ(もともとカリそのものは無機)あまり存在せずニコチンかすや 羊毛クズ草木灰(これを有機とするかは議論の分かれるところですが)程度しかありません。高校時代の生物で リービッヒの最小律と言う言葉を習ったことがあると思いますが、樽にNやCaやMgと書いてあって低いところから 水がこぼれると言う絵です。作物というのは、一番少ない肥料成分によって収穫量が決められると言う物です。 つまり、チッソやリン酸をいくら大量に施したところで、カリ成分が不足していればそのカリ成分によって収穫量が 決まってしまうと言うことです。 ですから、ケイフンだけでとか菜種粕だけで職業農家が作物を作れるわけがありません。 その昔、あるラジオ番組でドクトル某なる方が、肥料と農薬の話になって私は無農薬栽培だし、肥料だってケイフン しか使っていないから安全だと話していましたが、当時養鶏では餌に抗生物質を沢山混ぜて育てていた時代で抗生 物質がフンと一緒に土壌に入り、土壌の微生物相を変えるとか植物がそのまま吸い込んで、結果知らず知らずのうちに 抗生物質を我々の体に取り込んでいた言うことさえあります。肥料はケイフンだけでも作物は育ちますが、だから安全 というのは早計です。その背景まで調べないと、安全と結論付けられません。 化学肥料が安全でないないかというと、化学肥料はその構造式がわかっているためその式を見れば危険でないと 理解できます。 しかし解っているために余分な成分がないことも解ります。作物も人間と同じようにありとあらゆる栄養素がたとえ ほんの少しでも必要なのです。有機質肥料にはそういう微量要素がppm単位で入っています。また、蛋白質が分解 したアミノ酸などはそのまま根から吸収されることが解っています。ここが有機質肥料を使うと味が良くなると言うポイ ントじゃないかと思われます。 その他、微生物分解によって肥料成分となるため肥効がゆっくりで急激に植物に吸われない(葉物に硫安や尿素を 多量に与えると急に生育するが、食べると苦みなどを感じたりして美味しくない)。 作物には施肥量によって適正領域があって、この部分で収穫することが一番良いとされます。(図1)出井原図 すべての作物は収穫目標量があって、それに対する施肥量も解っています。 農家はそれをもとに肥料設計をします。全量有機ではまかえないため、無機肥料も使います。 全有機、無農薬で作った作物と有機、無機を上手に使い病害虫を農薬によって防いだ作物、 どちらがより安全で美味しいか結論は出ないと思います。 |
下の写真が動物有機配合です。白く見えるのが骨粉、その他ラードを絞った残りの肉粕、乾血粉。肉骨粉などで有機質の中でも
最高の原料のみを使っています。
図1 |